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Slow Food Fast Cooking

【スローフード・ファーストクッキング】

ハーブに導かれて、地中海沿岸諸国の食の世界に足を踏み入れたのは、もう50年ほど前のこと。その間に、こつこつと庭でハーブを育て、各地に残る伝統料理を中心に、楽しく作り美味しく食べて元気に暮らすライフスタイルを目指してきました。1970年代には、伝統的な地中海型食事習慣が、現代人が直面している健康問題の解決に繋がることをアメリカの学者が立証し、地中海食の主要な食材であるオリーブオイルを健康維持に役立てるための研究も盛んになってきました。

地中海沿岸諸国の中でもイタリアには、アメリカや他のヨーロッパ諸国などと比べると、まだ伝統的な食品や食事習慣が残っており、アメリカからファーストフードが入ってくると、自分たちがこれまで維持してきた食文化が崩れるのでは、という危機感が生まれました。それがスローフードの運動となって、伝統食品や料理の保護、それらに携わる人々の保護、食の教育などを目指して活動を始め、今では世界中に広まっています。

私は40年ほど前から、一見同じように見える料理を作って食べていますが、実は、料理名は同じでも、材料が変わったり、作り方が進歩してきました。スローフード運動の影響もあって、イタリアでは自然とともに作る伝統食品がより規模を大きくして作られ、外国へも輸出され始めたので、日本でも上質のスローフードが簡単に手に入るようになったからです。いい食品を使えば料理は簡単。しかも、調味料が少なくてすむことも体験からわかりました。この料理法を私はスローフード・ファーストクッキングと呼び、多くの方々に知ってほしくて、イベントをしたり、料理本を書いています。食べ物は買って食べるものではなく、作って食べるもの、という考えに立って職を持ちながら子育てにも忙しかった私に、救いの手をさしのべてくれたのが、イタリアの伝統食材でした。スローフード・ファーストクッキング料理法が生まれたのは、イタリアのスローフードのお陰です。

北村光世

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